音と音が重なり合うと、別のものが生まれる。
安定したもの、不安定なもの、それぞれのつらなり、
それを作りだす面白さが重唱の楽しみである。
音の重なりを和音と言う。
安定して聴き易い和音(協和音)と、不安定で心安らがない和音(不協和音)とがある。
そもそも1人で歌うのと、何声かで和音を作ってゆく重唱や合唱とでは、その喜びや満足は全く違う。
1人歌い(独唱)は、譜面さえ守れば、自分の思うままに充分に歌えばよい。
人によっては人前で1人で歌うのは、格好良いこととさえ思うようだ。
音楽的に多少ずれていても持ち味として許されたりもする。
一方の重唱(アンサンブル)、これはいささか難しい。
音程が合っていないと他音間が不安定になり、相手の音との間の修正が必要となる。
こうして出来た和音は、歌う人にとっては部分でありながら“新しいひとつ”そのものである、
と言う二つの次元の満足を与えてくれる。
重唱は歌うための技術だけでなく、音楽センス、音楽マナー、音楽観など多くの事を育ててくれる。
大人数での合唱もよいが、少人数の重唱(アンサンブル)は、この味を覚えると止めれらない。
2008年10月4日
磯貝靖洋