【コラム】現代若者のオノマトペ型情動表現、それは音楽!

「ヤベー」 「超ヤベエ」

否定心理でも肯定文でも、全てをこの語をなげかける事で、 了解し合っている。
一種の小グループの隠語的ハヤリ、方言である。
言葉で論じ合う手間をはぶき、感覚的な共感性だけで過ごすための言葉だ。
外部との交流性は弱く、閉鎖的で、むしろ独善的に孤立する事を好む効力を持った言葉だ。

考えてみるに“YABEE”という音を基本に「超」「めっちゃ」「極」と いった副詞的装飾語をつけ、多少のニュアンスの幅、 使いまわしをしている。
具合が悪いとか良くない、まずい等の意味の「ヤバイ」が 北関東弁の語尾「ベー」に転化したものと思われる。
ここまでは多くの人達も感じとっていて何等物新しい事でもない。

実は、私にはこの「ヤベー」という語はオノマトペーとして聞こえて来る。

やはり、今ある種の人達の中で流行っている 「ザックリ」「サクサク」等と同じに聞こえる。
何となく分かるが、あまりはっきりとした焦点のない語と 受け取れる。
だが、使っている人にとってはとてもしっくりと 納得のいっている語の様だ。
これ等の語が今後50年くらい生きのびると、情動的オノマトペーとして公認されるのであろうが、現在ではハヤリ言葉として消えていく一つの現象となりそうだ。

これだけでも“アーそうですか”と何等面白味がない。

ハヤリ言葉とオノマトペー、実はこれは独特な音楽なのだ。

私達は今、この様な精神的、身体的状態を適格に表現する言葉を持っていない。
ヤベーから始まり、サクサクまでの言葉は妙に身体感が強く しかも何か訴えたい力をもっている。
それを表現するには音楽が一番だ。

次にはダンスだ。
オノマトペー流行り言葉は音楽でダンスだ!

”そりゃ君、話がとびすぎるよ”と言われるかも知れない。
意味で固めた重たい日本語を、声の力で生き生きとする事なのだ。

音楽感覚なら乗り易いし近づき易い。
独特の音とリズムがキーだ。

音楽なら沢山の新しい才能が参加して洗練出来る。
そうしたら50年生きのびられる。


2010年6月
磯貝靖洋