私達人間は、五感(視、聴、嗅、味、触覚)がセットされて生まれてきます。幼児期から育成期にかけ、身体と共に五感の形態も機能も育ちます。この頃、一番大きく育つのが脳です。この脳と体の育ちと寄り添うようにして育つのが、“ことば”です。中でも立って歩くようになると、脳は活発に活動し、ことばも覚え、喋りも発達します。
人間のことばは意味を持った音(声)です。まず声のことばで育ちます。英語では“Voice”と言い、声とことばの意味を持ちます。日本語では、一般的には“ことばは音である”というより、意味や文字や使い方等が頭に浮かびます。もちろん、声、文字、意味を縦横に使いこなし、素晴らしい人生や豊かな文化を築いています。
ことばは他の人達と生きていくのになくてはならぬ道具です。ことばは育成されて育つといいましたが、そもそも生まれる以前から、遺伝子の中に蓄積され、繋がっているのです。その基本の上に、日々の生活で記憶され、物事が脳に蓄積されていきます。そのため、体験したことのないことも、想像し話せるのです。
私達が何か話そうとする時、目の前の今に反応する脳と、古い蓄積された脳を引き出し、重ね合わせ、瞬時に最適な言葉を見つけ、話していきます。文字やデータ化された言葉は古い脳、声のことばは今の脳です。止まることなく次につながっていきます。声は今なのです。そして、次の今なのです。
声のことばを学ぶということは、素敵な今をキャッチすること、次の今を作り出そうとすることです。磯貝メソッドは今を生きることば(声)のメソッドです。声が変わると、ことばの意味も、発する人の心も変わるのです。
磯貝靖洋