声を出し、言葉を話す人間にとって舌は無くてはならない。
又、物を食べエネルギーを摂取するに当り、 舌がないと食べる事が出来ない。
話すことで精神や心を持ち、育て、 食べることで命を育み、保っている。
この人間を成立させる2つの根元を1つの“舌”という器官でまかなっている。
言いかえると私達“人”は心と命を“舌”にまかせきり、たよりきって生きている。
しかも相当に無意識、無神経に。
当然生活上は、話すも食べるも舌の事を考えたり、意識を集中したりしていない。
何とも自我の奴隷のごとき関係にある。
と云う事は舌は随意筋で括約筋であることが分かる。
今話している言葉も出している声も随意的に舌をコントロールして出している。
ただ、あまりにも長い期間習熟したためほとんど無意識に…。
声や言葉は変わらない、と考え決めつけている人は多い。
この人達は舌使いも変らないと勘違いしている人が多い。
良く喋る人、早口で話す人が必ずしも良い音声とは限らない。
声と言葉を職業とする人にとっては、舌とどの様に付き合うかは大変重要な事である。
言葉の精度、質を上げるのは正に“舌”によると言えそうだ。
2010年7月
磯貝靖洋