【コラム】「人の言葉はまず母音」

 日本語は、あ・い・う・え・おと五つの母音で成り立っている事は皆良く知っています。
この五つはそれぞれ違った音を持っています。何が違うかというと、響きが違います。幼児(人)が言葉を覚え始める時、ほとんどの人は母親からじかに教わり、身に付けて行きます。むしろ教わったと言うより、授かったと言う方が正しいでしょう。

 まず母親の胎内に住んで(!)いた時、母親の言葉を聞き、その振動を受けて育ちます。
長らく母親の話す音(振動)と同調して育って行きます。元々遺伝子の中にセットされている言語能が発現してくるのです。それに刺激を与え続けるのが母親の母音振動です。

 生れると今度は母親の声(空気振動)を直接受け、独立した生物体として育って行きます。
母胎の内の直接振動が間接振動として耳から入ってくるのです。「あっ、お胎の中で受けていたあの振動は、音になるとこういうものなのか。」と感じ(音感)、育って行きます。(人間にとっての音感とは、いろいろな音を受け、なるべく正確に識別して行く能力の事をいいます)

 そもそも音とは空気の細かい振動です。それは沢山の種類を持っています。
私達はこの振動は“鳴り”と「響き」としてとらえます。鳴りは瞬間のショック的運動のため、その後の響きをつかまえて“ウン、音だ”と知覚します。言葉の音もこの響きをつかまえて “ア” とか “ウ” など聴き分けます。ということは、ア・イ・ウ・エ・オの違いは響きの違いだ、と言えます。


2010年5月5日
磯貝靖洋